私がメンヘラをやめた理由①

去年の6月、私は体調不良(メンタルの悪化)で休職を決めました。

その頃の私は職場で過食嘔吐を繰り返し、ワンピースの下に16Gの針を3本刺して痛みで気つけしないとまともに働けない状態でありました。仕事も休みまくってました。

 

そんな状態でまともに働けるわけはなく、実質「いらねえ」と言われた訳です。

「また休職かあ」しょうがない、だって側から見て異常だもん。

私の過食嘔吐はフロア中に知れ渡ることとなり、上司の耳にも入りました。

 

「いらねえ」

 

梅雨の真っ只中、毎日ジトジト、光がさすこともなく厚い雲が太陽をプロテクトし一生ここから出られないかもしれない、そう思わせるバリアとなっている。

さて、これからどうしよう。幸い、その前の年にギリギリ入った底辺企業の「正社員」となっていたので、復職の心配をせずに済んだ。うん、でも休職だ。ジトジト。

 

そんな中、当時仲の良かったメンヘラから一通のラインが。

 

「女王、良かったら福岡来ない?」

 

当時、私はメンヘラ仲間から「女王」と呼ばれていました。

スカウトした女の子達から血液をもらってお風呂いっぱいに浴びていたからです。

処女300人の血を浴槽いっぱいに入れ浸かっていたという、エリザベート・バートリにちなんで女王と呼ばれていた訳です。その血液ガールズの一人から、「メンヘラが集まるからうちにおいでよ」とお誘いを受け、私は退職の挨拶をしたその足のまま福岡へと向かいました。

 

福岡空港に着くと、そこには4人のメンヘラが私を待っていました。

 

まず、メンヘラシェアハウスの主「チェリー」

愛らしい笑顔と高いテンションの「りな」

バンギャ丸出しでタトゥの入った「のん」

レズビアンで超美形の「ポチ」

 

チェリーとは普段から交流もあったし、以前会ったこともありました。

ポチは界隈では有名なカリスマメンヘラでファンも多く、フォローはしていました。

りなとのんとは完全初対面。でも、そこはメンヘラ。まるで会った事があるかのようなテンションで、一瞬で仲良くなりました。最初からタメ口、会った瞬間からハグ。

私たちはもう「友達」です。

 

メンヘラ界隈には一定数「カリスマ」のような存在が出てきます。条件は⑴顔がいい事⑵派手な自傷をしている事⑶破綻した生活を送っている事、これらが派手であればあるほど崇拝される存在になっていきます。ファン、というよりは「信者」が出来上がっていくのです。チェリーとポチはその「カリスマ」のうちに数えられる有名なメンヘラでした。

 

そこからの一週間、私たちは本当に破綻した生活を送りました。

 

好きなだけ欲しいものを買い、好きなだけ歌い、好きなだけ食べて吐き、酒を飲み、ホストを荒らし、血を浴びて、タバコを吸い、雑魚寝をしてまた好き放題して騒ぐのです。ここには書けないような事もしていました(犯罪ではないです)

生活は自由、出かけるのも寝るのも起きるのも各人好きなタイミングで。

共同でかかるお金は割り勘。そうやって、「なんの制限もない本当の自由」な一週間を過ごしました。

 

すごく楽しかった。

ストレスでメンタルを壊し、休職した絶望なんて吹き飛ばす、干渉も倫理もないこなさなければならないタスクも一切ない、お互い良ければ全てよし!のスペシャルな一週間でした。

 

ただ、そんな生活を続けるうちに私の中にポツポツと水滴のように染み出してくる「違和感」がありました。

 

「私、ここでこの生活を続けていていいのだろうか?」

 

ここではみんなが血まみれです。真っ赤になって騒いでいる。

普通じゃ考えられないほど私達は笑いながら、懸命に血まみれになっていく。

瀉血リストカットとは違い、大きな傷は残らないし、大量の血液を噴射させます。

真っ赤なシャワーを浴びながら、私たちは順調に狂っていく。

 

でも、私はこう考えるようになっていました。

「私は、これでいいんだろうか。」

 

みんなが騒いでいる中、私はひとりマンションから出て前にある駐車場でコンコンと考え続けます。夜、誰もいない。そんな中、ずっとループする私の頭の中にはこの、このままでいいんだろうか、このままでいいんだろうか、私のなりたかった大人ってこういうものだっけ、これって、これって?そんな。

 

私は思いました。

もしかして、ここにいるべきじゃないのかもしれない。

 

そんな違和感がジクジクと沁みてきて、ついに滴ってくる。

笑って、ラリって、浴びて、食べて、寝る。 

 

ここってもしかして最底辺?世の中にはいろんな世界があって、いろんなコミュニティがある。それは同意の上であれば成立し、人肉食べていても、糞尿垂れ流していても、それがそのコミュニティ内で同意されていればそれでいい。でも、私が属したかったコミュニティはここだったのか?

 

 

島田